妊娠5wで陽性反応が出て、翌週には胎嚢と心拍が確認できてから、妊娠12wを迎えるまで安心できた日は一日もありませんでした。
悪い予感は的中するもので、妊娠8wめに何の前触れもなく大出血が!
その時の様子と、妊娠判定で陽性が出てからの出血で考えられる原因と疾患を調べました。
また出血の量や、血の色、その他の症状などで、夜間でも受診するべき目安や、その際に医師に伝えるべき内容をまとめてあります。
妊娠に伴う出血、妊娠に関係ない出血、流産での出血など、妊娠初期の出血には様々なケースが考えられます。
出血があって不安になっている妊婦さんの参考になればと思います!
目次
妊娠初期に大出血! 流産の予兆はあった?
そもそも不妊治療で一度失敗していること、体外受精での妊娠で、しかも双子・初産・高齢というスペックに、安心できる要素がひとつもなかったために、「流産のネガサーチ」をする毎日でした。
とにかく不安しかなかったので、妊娠報告は流産の確率が下がる安定期までしないことにして、まだ職場や両親にも伝えていない状態です。
そのため、私生活の変化もなく外回り中心の仕事をそのまま継続していました。
どちらも近かったので、通勤はそこまで苦ではありませんでした。
妊娠初期の就業環境についてはこちら↓
そんな妊娠8wめ、仕事帰りの電車の中で、ふいに下半身に違和感が。。。
生理中の出血時に感じる「生暖かいものが流れ出る」感覚
最初はおしっこ漏らしたかと思いました。
「え、まさかね…」と、自宅最寄りの下車駅でトイレに駆け込むと、なんと真っ赤な鮮血が!
量にしてショーツのうしろまで広がるくらい。かなりの出血量です。
頭の中は一瞬にしてパニックになり、今までネットで見た様々な「流産になってしまった時の話」が頭をよぎります。
腹痛などの症状は一切なかったですが、出血の量が尋常ではありません。
自己判断は危険だと思って、とりあえず病院に連絡をしようと時計を見ると、時刻は18:15過ぎ。通っていた不妊治療のクリニックの最終受付は17:45、営業時間は18:30までです。
すぐに向かったとしても間に合いません。
絶望感に包まれながらも電話をして、状況を説明したところ、受付から先生に取り次いでくれて、「診てみないとわからないので、すぐに来てください」とのこと!
妊娠初期の出血で、時間外でも診察してくれました
ほっとしたものの、心臓はバクバクで、頭の中はぐるぐるです。
駅のコンビニでショーツと生理用パットを購入した後、階段や徒歩が良くない気がしてタクシーで向かうことにしました。
受付時間を過ぎていたので、病院は閑散としていて、そのまま診察室へ呼ばれました。
- 電車に乗っていた時に突然の出血があった
- 真っ赤な鮮血
- 量は生理中くらい
- 塊はなくサラサラ
- 腹痛やその他の変調は無し
電話で伝えた内容と重複しますが、まずは状況説明ののちに、速やかに内診台へ。
「残念ですが」と流産の報告を受けるのではないかとの思いで、緊張は頂点に達します。
鮮血の不正出血での診断結果は…

赤ちゃんも大丈夫です。
出血も止まっているようですね。

(生きた心地がしなかったわ…)
なぜ出血したのか聞いてみたところ、「おそらくは子宮内のどこかからの出血。この時期はエストロゲン(妊娠ホルモン)の作用で、少しの刺激でも傷つきやすくなっているからだろう」とのことでした。
- 重要なのは、胎芽が正常に発育しているかどうか
- 胎芽が正常に発育していれば、妊娠初期に流産することはほとんどない
- 出血があって、強い腹痛があるときは受診が必要
以上のことから、総括して以下のような診断になりました。

この日は、もうお会計が閉められているということで、次回の診察時にまとめて払うことに。
私の場合は特にこれといった予兆もなく、突然の大出血に本当にびっくりしたことを覚えています。
その後は出血することもなく、一週間ごとに不妊治療のクリニックで検査を行い、妊娠10wには卒業しました。
不妊クリニックを卒業後は、分娩を行う総合病院に転院し、妊娠11wに妊婦健診を受けています。(異常なしでした)
分娩する病院についてはこちら。
妊娠初期に出血があった場合の受診の目安とは
私のケースでは、特にその後は出血が続くようなことはありませんでしたが、妊娠初期に出血があると「まさか流産⁉」と慌てる方が大半だと思います。
そこで、出血があった時にまずは何をチェックするべきかまとめました。
妊娠の早い時期に出血があった場合、注意する兆候
パニックにならずに、まずは現在どのような状態か自分で把握することが次の判断に繋がります。
妊娠後の出血の色
ざっくり言うと、薄茶色や黒っぽい血は過去の出血、赤い血は現在の出血と推測されます。
- 真っ赤(緊急度が高い)
- うすいピンク
- 赤褐色
- 茶色、黒っぽい
- うすい茶色(緊急度は低い)
妊娠後の出血の量
出血が大量、出血が止まらない、出血量が増えていく場合は、病院に連絡をしましょう。
- 生理2日目よりも多い(緊急度が高い)
- 500円玉くらいの量
- おりものに血が混じって下着に少しつく程度(緊急度は低い)
妊娠後の出血の症状
- 膿が含まれたおりもの
- さらさらとした血液が流れ続ける
- 組織やレバー状の大きな血の塊が混じった血液
- ブドウの房状の組織(囊胞)の排出
腹痛や骨盤痛の症状
- 急に始まり、持続する痛み(痙攣性ではない)
- 動いたり姿勢を変えたりすると悪化する痛み
- 骨盤部の締めつけるような痛み
- 腹部全体に広がる激しい痛み
身体の症状
ひどい低血圧の症状
- 発熱や悪寒
- 失神、ふらつき、動悸
ひどい高血圧の症状
- 足または手のむくみ
- 激しい嘔吐
妊娠中のトラブルについてはこちら。
ポイントは出血量と腹痛、その他の症状
まだ自宅での妊娠検査薬で陽性反応が出ただけで、病院で妊娠反応検査を行っていない場合と、すでに病院での妊娠判定が終っているかで、対応も変わってきます。
まだ胎嚢が確認されていない場合
- 生理2日目よりも多くの出血があった
- 生理中よりも激しい下腹部痛があった
- またその両方の症状があった
➡ 緊急の処置が必要になることが考えられます。病院へ電話して、夜間であってもすぐに受診してください。
すでに胎嚢が確認されている場合
- 生理2日目よりも多くの出血があった
- 生理中よりも激しい下腹部痛があった
- またその両方の症状があった
➡ 緊急である可能性もあります。まずは病院へ電話して受診するべきか相談しましょう。
妊娠初期に出血があったら、いったん落ち着いて状況を確認することが大切!
出血や腹痛以外に、普段とは違う異常が感じられる身体症状がある場合も、自己判断はせず電話で確認した方がいいと思います。
急激な変化がない場合は安静にして様子を見ましょう。
生理2日目よりも出血量が少なく、異常な排出物が無いようであれば、夜間ではなく落ち着いてからの受診を指示されることもあるようです。
妊娠判定についてはこちら。
出血などの異常があった場合、電話で病院に伝えること
妊娠初期での出血で気になったことがある場合は、かかりつけ医に相談することが一番です。
出血量が少なくても不安がある場合は、遠慮せずに医療機関に電話してみましょう。
- 妊娠週数
- いつからの出血か
- 出血の量
- 出血の状態(色、におい)
- 塊や固形物が混じっているか
- おなかの痛みや張りはあるか
- その他の身体状態
出血量が多く、腹痛が強いほど流産になる可能性が高いと言われています。
しかし初期流産を予防したり治療する薬はありません。
そのため、妊娠12週未満の妊娠初期に出血があって受診しても、強い腹痛がない場合は「要経過観察」になることが多いそうです。
切迫流産で管理入院になった様子についてはこちら。
出血を放置すると二次感染の危険があります
では、腹痛がなければ受診しなくていいのか? というと、また話は違います。
出血を放置することで、腟内や子宮頸管内に存在する常在細菌が悪さをしてしまう可能性があるからです。
常在細菌とは、主にヒトの身体に存在する微生物のうち、多くの人に共通してみられる「病原性を示さない細菌」で、通常は無害ですが妊娠中は免疫力が落ちているため、負けてしまうことがあります。
免疫力の低下に不正出血の血液が加わることで、細菌が繁殖しやすい状態になって、細菌性腟炎や頸管炎などの感染症を起こすリスクが高まります。
膣内の感染は、切迫流産や切迫早産の原因のひとつと言われていて、子宮の収縮(張り)を誘発したり、子宮口が開きやすくなると考えられています。
そのような危険を避けるためにも、出血や腹痛など軽い症状であっても、健診の際にその旨を担当医に伝えて、適切な治療を受けることが大切です。
妊娠12w以降の出血は、量や色に関係なく、すぐ受診しましょう。
ウテメリンについてはこちら。
以下からは、出血があっても妊娠に影響がない場合についてまとめました。
妊娠中の出血で特に問題がないケースとは
妊娠中の出血は、5人に1人以上が経験しているそうです。
その中でも特に、妊娠初期に少量の出血があった場合も含めると、約30%の妊婦さんが経験するといわれています。
- 出血する原因の大半は不明
- 90%以上のケースで自然に治り、正常な妊娠へ戻る
- 出血の症状のみで、直接、流産に結びつくことはあまりない
- 出血があった・出血がなかった場合で経過を比較しても、流産する確率は変わらない
妊娠初期に性器出血がしやすくなる理由①
妊娠初期の出血で、妊娠4~8週めには、着床するときに出血する「着床出血」があります。(生理様出血・月経様出血とも呼ばれる)
- 子宮に到達した受精卵は、子宮内膜に埋没していく
- 絨毛(胎児の細胞)が子宮内膜の血管を破り、中まで入り込むことで「着床」する
- エコーでは丸い袋状の構造として観察される「胎嚢」となる
- 胎嚢が大きくなり、着床部の先端が「胎盤」になる
このように、着床後には栄養補給ルートとして「胎盤」が子宮に形成されます。
絨毛膜に血管が入り込む際に、子宮内膜の血管の破綻が起こることがあり、それがこの時期の出血と考えられているのです。
受精卵の着床についてはこちら。
妊娠初期に性器出血がしやすくなる理由②
次に妊娠6~11週では、着床出血の中でも「胎盤ができあがる過程によるもの」と言われています。
胎盤が成長していくと子宮腔はしだいに圧排されていきますが、胎盤が完成するまでは実は依然としてスペースが残っている状態です。
また妊娠初期は黄体ホルモンのエストロゲンの作用で、少しの刺激でも出血しやすい時期になります。
そのため、着床部の子宮内膜の血管からではなく、何らかの原因で傷ついた子宮腔のスペースから出血が起こると考えられているのです。
そして妊娠12週頃になると、子宮腔は完全に癒合して消失し、安定期と呼ばれる時期を迎えます。
- 全体の約8〜25%にみられる
- 着床時に必ずしも出血するとは限らない
- 時期は、生理予定日の1週間前(排卵日から1週間後)が多い
- 出血量は、通常の月経と比べて少量
- おりものに色がついた程度のケースも
- 期間は、2〜3日ほどで治まる
妊娠初期に性器出血がしやすくなる理由③
妊娠初期の出血には、ホルモン異常が原因の場合もあります。
- 絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンが分泌が少ない
- 身体や脳が妊娠だと認識しない
- 黄体ホルモンの分泌量が低下
- 生理のような出血が始まる
本来、妊娠すると分泌が増えるはずのホルモンが少ないがために、身体が勘違いしてしまうというわけです。
まだ妊娠していると認識していない場合、不正出血であることにすら気がつかないことも。
- 時期は、生理の予定日ころが多い
- 出血量は、生理のときと同じぐらい
- 期間は、一週間以上も続く場合もある
- 生理との区別が難しい
いずれの場合も妊娠には影響がない出血になりますが、自己判断は難しいと思うので、一度受診する必要があるでしょう。
妊娠に関連のない病気での出血
妊娠と関連がなく起こる出血もあります。
妊娠中はエストロゲン(黄体ホルモン)の分泌によって、免疫が低下していたり、ちょっとした刺激でも簡単に出血しやすい状態になっているためです。
この場合は胎児が妊娠している子宮内部とは違うところからの出血で、流産のリスクはあまり無いと考えられています。
出血の原因① 腟炎
- ごく少量の軽い出血
- おりものが増える
- おりものの臭いが変わる
- 性交時の痛み 骨盤痛
膣内の炎症で、子宮頸部から採取した生検の培養で診断します。
治療方法は、膣の洗浄や、抗生物質の膣錠を使います。
入院中の膣炎の治療についてはこちら。
出血の原因② 子宮頸管炎
- ごく少量の軽い出血
- 下腹部痛
- 内診の際に押されると痛む
子宮頸管の炎症で、子宮頸部から採取した生検の培養で診断します。
治療方法は、膣の洗浄や、抗生物質の膣錠を使います。
出血の原因③ 子宮頸管ポリープ
- 軽い出血
- 痛みはなく、ほぼ無症状
- 診察で子宮頸管内にポリープが見えることも
- 切除すれば、ほぼ問題なし
子宮頸部にできる(ほとんどの場合)良性のポリープ。
内診、超音波検査などで判明し、通常は経過観察になりますが、所見によっては妊娠中に切除することもあります。
出血の原因④ 腟部びらん
- ほとんどの場合は無症状
- おりものが増える
- 不正出血
子宮頚部の表面がホルモンの作用でふくらんでめくれてしまう状態。
女性ホルモン(エストロゲン)が活発に働く性成熟期の女性の8~9割にみられるもので、とくに珍しくありません。
検査してがんでないと判明すれば、治療の必要がない場合がほとんどです。
出血の原因⑤ その他
- 双角子宮などの子宮奇形に伴う出血
- 便秘などで、外痔核
- 内診や性交の刺激などで、膣内がただれる、外傷を受ける
ホルモンの影響で妊娠中は便が固くなりがちです。かかりつけ医に相談して、便を柔らかくする薬を処方してもらうなど便秘と上手に向き合いましょう。
妊娠中のセックスは膣内を傷つけてしまう場合があるため、無理をしないこと・身体を清潔にすること・おりものの変化や出血があった場合は行わないことなど、妊娠に配慮することが大切です。
妊娠中の便秘についてはこちら。
以下からは、妊娠初期の出血で危険があるケースをまとめました。
生理のような出血や腹痛で考えられる疾患
妊娠初期に出血した場合、中には重大なケースもあります。
(日本医科大学多摩永山病院女性診療科医局のホームページを参照しました)
どの疾患も医師による適切な治療が必要になります。
症状を見逃さずに受診するようにしましょう。
異所性妊娠(子宮外妊娠)
通常、着床は子宮の内膜でおこりますが、別の場所に着床してしまうことがあります。
子宮内ではない異常な位置での妊娠を「子宮外妊娠」といいます。子宮外妊娠の大半(97%)は卵管でおこり、「卵管妊娠」ともよばれています。
- 全妊娠の 0.5 ~1.5%の発生率
- 妊娠を継続できないことが多い
- 妊娠後の生活や安静度は発症に関係がない
- 4~5日間以上にわたって断続する出血、強い腹痛を伴う
子宮外妊娠は、必ずしも症状があるとも限りません。
出血や腹痛・骨盤痛があるケース、ごくわずかに異変があるケース、不正出血も痛みもないケースなど様々です。
また、ごく初期の妊娠4~5週には、正常妊娠や流産と見分けがつきづらいという特徴があります。
子宮外妊娠の経過
最も頻度が高いとされる卵管妊娠では、「卵管流産」といって、放っておいても自然に流産することもあります。
(➡ その場合は、出血が少量持続するが、自然に止血することが多い。)
しかし妊娠7~8週以降に出血量が多い場合は、すぐに受診する必要があります。その頃になると胎嚢が増大し、卵管が破裂してしまう可能性があるからです。
- 急性貧血
- 循環虚脱
- 低血圧
- 顔面蒼白
- 頻脈、発汗
- 悪心、嘔吐
- 意識障害
病院では、内診・腹部所見・血液検査(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:hCGの測定)・骨盤内超音波検査・腹腔鏡検査などが行われます。
子宮外妊娠が認められた際には、緊急手術で摘出することが多いようです。
卵管妊娠の手術療法とは
根治手術
・付属器切除術
・卵管切除術
➡ 取り除くことで根本的な治療になる
保存手術
・卵管切開
・胎嚢除去術
➡ 子宮外妊娠の再発率が高い(約10%)などのリスクがある
腹腔鏡下手術
・根治手術
・保存手術
➡ 術後のダメージや癒着が少ないメリットがある
片方の卵管が残っていれば、妊娠することは可能と言われています。
手術後の妊娠する力や年齢を考慮して、どの手術様式を選ぶか主治医と決めることになります。
正常妊娠では、妊娠反応の数値(hCG ホルモン値)が急激に上昇していくので、妊娠反応が薄い期間はごく短いのに対し、流産や子宮外妊娠などの異常妊娠では、反応が薄い時期が長くなります。
そのため、陽性反応(+)の色が濃く出た場合より、異常妊娠である確率が高くなると考えられています。
卵管についてはこちら。
絨毛性疾患(胞状奇胎)
「胞状奇胎」は正常妊娠ではありません。
通常、妊娠すると、子宮内膜に脱落膜や絨毛膜がつくられますが、その胎盤の絨毛に異常が出る病気で、胎盤の組織が過剰に増殖したものになります。
- 発生率は0.2~0.3%で40歳以上に多い
- 全体の8~9割に不正出血がある
- 約半数にルテイン嚢胞(妊娠黄体・卵巣嚢腫)がある
- 胎盤を形成する元となる絨毛が病的に増殖する
- 粒つぶしたブドウのような水泡状の粒で子宮内を満たす
- 全胞状奇胎になると赤ちゃんを吸収してしまう
超音波診断で妊娠5~6wで判明します。
ごく初期では、つわりの症状が重いのと、おりものに茶色い血液が混じったり、少量の出血が続くことがあります。
症状が重くなると、不正出血が続くとともに、出血量が増えたり、つわりがさらに悪化し、咳や頭痛がみられることも。
- 妊娠週数に対して大きい子宮
- 高血圧の症状
- 手足のむくみ
- 激しい嘔吐
- ブドウの房状の組織の排出
- 胎児の心拍や胎動がなくなる
- 絨毛癌が放置されると死亡に至ることも
病院では超音波検査、血液検査(ヒト絨毛性ゴナドトロピン定量)、胸部超音波検査、子宮内容物の生検などが行われます。
確定診断後の治療としては、子宮内容除去術をできるだけ早く行います。
絨毛性疾患は経過観察が大事!
- 追加の子宮内容除去術で、子宮内の絨毛細胞をきれいにする
- ヒト絨毛性ゴナドトロピンの推移を経過観察をする
- 経過順調でない場合は、臨床的絨毛癌の発生のリスクがあるため、抗癌剤を用いた化学療法を行う
- 脳や肺などほかの臓器への血行転移による症状が出ていないか、CTスキャンやMRIを行う
このように、絨毛性疾患は癌化の恐れがあるため、術後も最低半年間は通院して様子を見る必要があります。
経過観察中は無症状のため、病院でしっかりと検査・治療を受けることが大切です。
黄体嚢胞
黄体は、排卵後の卵胞(袋のようなもの)から形成されます。黄体嚢胞とは、その黄体の中に液体が溜まって腫れてしまう状態をいいます。
妊娠初期に、妊娠性ホルモン(hCG)が、妊娠黄体(プロゲステロン・エストロゲン)を過剰に刺激してしまうと、黄体嚢胞が起こると考えられています。
(なぜ過剰刺激が起こるのかは不明だそうです)
- 妊娠初期(妊娠12週)までが最も多い
- 黄体嚢胞のみでは自覚症状はほとんどない
- 卵巣がねじれたり、黄体嚢胞が破裂すると痛みが出ることも
- 痛みがある場合、多くは急に始まる
- 黄体嚢胞と卵巣嚢腫(腫れ)の判別が難しい
黄体の中に溜まった液体による重さで、卵巣が捻れてしまったり、黄体嚢胞が破裂してしまうことがあります。
黄体嚢胞が破裂した場合は軽い痛みで済むことが多いですが、卵巣が捻れた場合、激しい痛みがあるそうです。
たいていは左右どちらかの特定の部位から始まり、下腹部に痛みがでて、激痛による吐き気や嘔吐がみられることも。
病院では、内診と骨盤内超音波検査でみつけられます。
黄体嚢胞は基本的に自然に治る
黄体嚢胞のみの場合は、一時的な腫れで時間と共に小さくなったり消えたりすることがほとんどのため、経過観察でよいと考えられています。
ただし、卵巣が完全に捻れる場合は手術療法が必要になります。
破裂の場合には、症状に応じて入院または外来通院での経過観察を行います。
絨毛膜下血腫
絨毛膜下血腫とは、胎囊と子宮筋層の間に見られる血の塊で、何らかの原因で胎盤形成時につくられることがあると考えられています。
前述の「着床出血」が止まらずに、血腫をつくってしまうのです。
- 頻度は4~22 %(報告にばらつきがある)
- 妊娠初期(胎盤形成時)におこることが多い
- 出血と子宮収縮(張り)がある
- 通常の場合、血腫は子宮内で吸収される
- 妊娠4~5カ月に症状が自然と治まるケースがほとんど
- 出血量が多い場合は、安静を指示されることも
基本は経過観察をすることが多いですが、出血がおさまるまでは安静です。
その間、絨毛膜下血腫が大きくなったり、自然消失しなかったり、絨毛膜羊膜炎を合併する場合は、流早産のリスクが上がると考えられています。
問診、超音波検査、腟分泌物培養、理学所見(視診、触診など)が行われます。
必要に応じて腟洗浄や抗菌薬の膣内投与を行う場合もあります。
- 子宮収縮(張り)の間隔があく
- 出血の期間が減る
- 出血の色が過去のものになる(真っ赤➡赤褐色➡褐色など)
以下からは流産で見られる出血についてまとめました。
流産での出血はどんな特徴がある? 色や量など
流産した、もしくは切迫流産になった方の多くは、妊娠初期に少量の出血や軽い腹痛を感じています。
しかし前述の通り、正常妊娠でも約3割の妊婦さんに同じような症状が起こることがあります。
妊婦の年齢が高齢になると流産が増加する傾向があり、海外のデータでは40歳代での流産率は50%との報告もある。
妊娠初期の流産の場合、受精卵の異常によるところが大半で、流産になるかどうかは受精した瞬間に既に決まっているものになります。
出血があったので、もしかしたら流産なのではと心配!
妊娠初期の少量出血や軽度腹痛が「初期流産の症状」であった場合、現代の医療でそれを食い止めるすべはありません。
受精卵に「異常」があって流産する妊娠には、子宮収縮抑制剤や止血剤などを使用しても意味がないからです。
そのため、夜間や休日などに救急外来を受診せずとも、翌日の受診で大丈夫だと指示されることもあります。
また流産であった場合でも、かならずしも出血が伴うわけではありません。
ママは無自覚でも、胎児の成長が止まっていることが診察時に初めて分かる場合もあります。(稽留流産)
流産と早産についてはこちら。
切迫流産とは
「切迫流産」とは、流産ではありません。流産の危険がある状態を指す「病名」になります。
妊娠初期に出血・下腹痛がある場合、切迫流産と診断されます。
流産になってしまうと基本的に妊娠継続不可能ですが、「切迫流産」は妊娠継続の可能性があります。
しかしながら、妊娠12週未満の切迫流産に有効な薬剤や治療法はないので、経過観察で対応するしかないのは同じです。
胎児は生存していますが、流産の一歩手前の状態になります。
切迫流産についてはこちら。
流産での出血とは
すでに起こった、または進行中の流産である場合、骨盤部の締めつけるような痛みや、腹部全体に鈍痛が広がる場合があります。
出血が止まらずに、子宮内容物が外に出始めている状態を進行流産と言います。
子宮内容物の排出が始まった後、まだ一部が子宮内に残存している状態では、出血・腹痛が続くことが多くなります。(不全流産)
胎児の組織などの子宮内容物がすべて自然に出てしまった場合は、出血・腹痛は治まっていきます。(完全流産)
敗血性流産の場合の出血
敗血性流産とは、子宮内容物が感染を起こした状態で、母体死亡のリスクがあるため、慎重な管理が必要になります。
未熟な医療従事者や、妊婦自身が行う「不完全な妊娠中絶」の既往歴がある女性にみられることが多い疾患になります。
- 流産直前・流産中・流産直後にみられる
- 流産後24~48時間以内が多い
- 発熱、悪寒
- 持続する腹痛(腹膜炎)
- 膿が混じったおりもの
病院では、超音波検査、血液検査、子宮頸部から採取した生検の培養などを行います。
悪化すると、敗血症性ショックで、低体温症・低血圧・乏尿・呼吸窮迫が起こることも。
治療は強力な抗菌薬療法と、手術による子宮内容除去になります。
流産の原因① 染色体異常疾患
染色体異常疾患とは、両親から受け継いだ染色体が変異したことで生じる病気のことです。
染色体異常は「数的異常」と「構造異常」に大別されます。
配偶子の染色体異常として、精子の異常率は9-15%でその内訳は数的異常が1.4〜4.1%、構造異常が7.7〜13.5%とされている。
卵子の数的異常は10〜30%、構造異常が0.4〜6.0%で、全体としての染色体異常率は18〜34%ある。
受精卵の染色体異常は、20〜40%程度と言われている。
流産と診断されるうちの、50~70%に染色体異常を伴うとされていて、さらにその60%に染色体が3本ある状態の「トリソミー」が認めらます。
- 全新生児の0.6%に発生する
- 染色体異常が起こる時期は不特定
- 両親の染色体が正常でも発症する
構造異常とは
染色体の構造そのものが変化した状態をさします。
- 染色体相互転座
- 不均衡型転座
- 染色体逆位
- 部分欠失、重複
- 環状染色体
- 同腕染色体(イソ染色体)など
数的異常とは
数的異常を伴う場合、約75 %は妊娠8wめまでに流産となるといわれています。数的異常がない場合は、妊娠13wに流産のピークがあります。
- トリソミー(染色体が3本ある)
- モノソミー(染色体が1本しかない)
- 三倍体(染色体が3 本ずつあって69本)
①13と18トリソミーは誕生できる場合もありますが、18トリソミー(エドワーズ症候群)の半数は1カ月以内、13トリソミー(パトー症候群)の9割は1年以内の寿命と言われています。
21トリソミーはいわゆるダウン症と呼ばれるものです。それ以外のトリソミーは、ほぼ全て流産になると言われています。
②モノソミーの大半は流産になりますが、流産を免れた場合、ターナー症候群として知られます。
しかし40歳になると、約100人に1人になるといわれています。
染色体異常についてはこちら。
流産の原因② 遺伝子異常
遺伝子が変異している数によって「単一遺伝子疾患」「多因子遺伝子疾患」に大別されます。
遺伝子の突然変異がヒトの正常な機能を妨げることで、病気や先天異常が生じます。
単一遺伝子疾患
ヒトの遺伝病のうち、ひとつの遺伝子の異常によっておこる病態。
- 多くの単一遺伝子疾患は稀なもの
- 重篤な単一遺伝子疾患の頻度は0.36%
- 入院している小児疾患の約6~8%
多因子遺伝子疾患
ヒトの遺伝病のうち、複数の遺伝子に生じた異常によっておこる病態。
- 先天性奇形
- 奇形症候群
- 先天性代謝異常症 など
アルツハイマー型認知症、糖尿病、高血圧など成人になってから発症する多くの疾患が含まれる
卵子や精子の老化についてはこちら。
まとめ
- 妊娠初期は様々な理由で出血が見られやすい時期
- 出血の色・量・下腹部痛の強さ・その他の症状を総合して緊急度を判断、まずは病院に電話で相談する
- 妊娠12週までの流産は治療法がないので、翌日の受診になる場合もある
というおはなしでした。
私の場合は、まだ不妊治療クリニックに通っていたこともあって、たまたますぐに診察していただけることになり、その日のうちに胎芽(赤ちゃん)が正常である確認が取れたので、本当にラッキーだったと思います。
病院が営業時間内で出血があった場合は、とりあえず電話で相談するのがいいと思います。
夜間や休日であった場合も、慌ててタクシーで急行する前に、当直医がいると思うので、まずは電話で症状を伝えましょう。
少量の出血や軽度の腹痛の場合、心配し過ぎずに翌朝の電話でもいいと思います。
妊娠初期というナイーブな時期の出血には、ほんとうにドキドキさせられますが、赤ちゃんの生命力を信じることも必要ですね^^
出血があって不安なマタニティライフを過ごしている妊婦さんの励みになれば幸いです(*^^*)