体外受精による出産率が一番低い国の日本の写真です。

日本は世界から見て、不妊治療の技術は最高レベルなのに、妊娠率は最低レベルといわれています。

ICMART(国際生殖補助医療監視委員会)によると、日本は体外受精の件数が世界最多にもかかわらず、1回の採卵あたりの生産率(治療数を出産に至った治療数で割った数)は、6.2%と60カ国中最下位だったそうです。


また日本には生殖補助医療について定めた法律はありません。

日本産科婦人科学会が自主的にガイドラインを設けているだけなので、病院や医師によって治療方針がバラバラだったりします。

つまり日本で不妊治療で結果を出すには、現状を知り、正しい知識を持って、自分のスペックに照らし合わせた治療を総合的に選択していく必要があります。


そこで今回は、日本で子供ができにくい背景を知るために、海外の不妊治療の実情を調べて、日本の不妊治療の問題点を浮かび上がらせたいと思います。

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日本の不妊治療の現場

世界初の体外受精による赤ちゃんが誕生してから約40年、世界中で体外受精で生まれた人の数は800万人を上回る中で、日本の体外受精による出産率の低さが際立っています。

世界から見て日本で子供ができづらい理由を見ていきましょう。

日本特有の自然志向が不妊治療にも根付いている

  • 自然妊娠を望み、不妊治療を始める年齢が高齢化している
  • 人工的な施術を避け、投薬も極力控えたいという希望が多い


このように日本で妊娠・出産を見た時、「いつかできるだろう」といった医学的に根拠のない精神論や根性論が多く、「自然に近い=身体に優しい」ということで「自然妊娠に近い治療」を尊ぶ傾向があるそうです。


実際に、2015年に日本で体外受精を受けた女性の4割は40歳以上で、また
体外受精でも排卵誘発剤を使わない低刺激法を優先していいます。

本来は、医師が患者の条件に合わせて、薬の種類や量を微妙に調整するべきですが、日本では始めた年齢に問わず、一般不妊治療を一通り繰り返してダメだったら特定不妊治療に移る、といったステップアップ式がスタンダードです。


排卵誘発の刺激法についてはこちら。


正しい不妊治療の知識がない

また、海外では子供のうちから教育をしっかり行っているので、不妊治療がポピュラーになっていると言えます。

そのため、「卵子や精子は老化する」という事実がきちんと認知されていますが、日本では当事者になって初めて知ることも多いと思います。


実際私も気まぐれで調べなかったら知らないままでした(^^;

私が早めに不妊治療に踏み切れた理由はこちら。



そのため若いうちに妊娠のタイムリミットを知らないせいで、夫婦での不妊治療の取り組みが遅くなっていることが指摘されいます。


人工授精の平均の妊娠率は7~9%ほどです。

これは何回かやれば、誰でも妊娠できるという意味ではありません。

人工授精で妊娠できる人はほとんど5~6回までに、特に1~2回で妊娠します。

全体の平均で7~9%という事で人工授精では妊娠できない人もいます。


このような数々の事実を知らずに、一般不妊治療を延々と繰り返すこともあるようです。

そして、いざ実際に体外受精に踏み切った時には「着床条件」がなかなか揃わず、そのせいで手術件数のわりに出産数が低いという結果に繋がっています。


タイミング法の現実についてはこちら。


基礎体温の真実についてはこちら。

妊娠は病気ではない

という言葉はよく聞きますよね。

それと同じように、日本では「不妊は病気ではない」との考え方が主流となっています。

しかし海外では病気の一種として、不妊治療にかかわる治療費は(条件は付くものの)保険でカバーされる国が多くあります。

そのため治療による高額な負担がないので、適した年齢での治療を無理なく行えるのです。

また保険での治療では、年齢制限での線引きも行っているので、そういった男女のタイムリミットを知ることで、計画的に不妊治療を行えます。


年齢が上がることで妊娠率は変化することが周知の事実になっているのです。


子育ての意識も日本は遅れている

共働きがスタンダードになりつつある社会で、いまだに日本は子育てに関して「母親の仕事」として認識されている部分が大きいです。

しかし海外では男性も女性も関係なく、一緒になって子育てに関わっていくという姿勢が一般的です。


そのため、妊娠出産の社会的支援はもちろん、不妊治療においても、女性ばかりがクリニックへ通う日本とは異なり、原則的にカップルで訪れて治療を一緒に進めていきます。


このように不妊を「病気」と捉えることで、社会でも理解が深まり、「治療」で治していくという意識が高まります。

そうなることで自然と不妊治療を始める年齢も早まり、結果的に自然と妊娠率の向上に結びついているのです。


男性の不妊治療についてはこちら。


国の不妊治療の対する支援が低い

着床前診断、卵子提供、精子提供、代理母といった新しい選択肢が日本で行われていない大きな原因は、国による不妊治療に対する取り組みが後回しにされている点にあります。

倫理観にかかわることでもあり、出生した児の将来や家族関係に大きく影響を及ぼすため、多くの国で「第三者の関わる生殖医療により出生した子の権利」を守るため、親子関係を規定する法整備がされています。

日本では日本産科婦人科学会による規定のみのため、法律を伴わないと導入できない現実があります。

つまり日本の不妊治療は、世界の最先端であるのに対し、国の支援や法整備に関しては「最も遅れている」後進国であると言えるのです。


その他の不妊治療のリスクはこちら。


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世界の不妊治療の現場

それでは、海外で具体的にどのような不妊治療がなされているのでしょうか。

日本では認可されていない治療法がたくさんある

世界で行われている体外受精のうち、約6%が卵子提供によるものだそうです。(ICMARTによる2012年世界統計調べ)

また海外では、着床できない胚を除くことで妊娠できる確率を上げる着床前診断も積極的に行われています。

着床前診断による胚の選別は、遺伝心疾患・染色体構造異常の検査86%、染色体異常性の検査70%、性別選択の検査30%の国でそれぞれ認められています。

また、第三者への提供の可否は、精子提供85%、卵子提供80%、胚提供61%、代理母38%の国で認められています。(IFFS Surveillance 2016による2015.12.31現在の調査)


このように、第三者が関わる不妊治療を始め、各国では様々な形の治療の選択肢と、それに伴う法整備や不妊治療に対する社会の理解も高まっています。


卵子提供についてはこちら。



それでは各国の不妊治療について概要を見ていきましょう。

フランスの不妊治療

不妊を「疾病」とするフランスでは、保険適用により患者の経済的負担はほとんどありません

男女両方が検査を受け、医師に治療が必要だと認められると、収入に関わらず誰でも無料で不妊治療を受けられます。


  • 保険で不妊治療が受けられるのは生殖可能な年齢まで
  • 体外受精を受けるのは女性が43歳の誕生日前日
  • 人工授精が6回まで、体外受精は4回まで
  • 肥満や喫煙は不妊を引き起こすリスク要因のひとつとし、まず適正な体重に戻し、禁煙してから治療を始める


日本の人口の半分ほどのフランスの治療総数は、日本の治療数の約1/3にあたる、6万8000件
不妊治療を受ける女性の平均年齢は日本より3歳若い、34歳

回数が少なく、年齢も若いのは不妊治療に対する国策によるところが大きいのでしょう。

国民の意識が高い

また、フランスでは子育てを男女両方でするものという認識があり、保育環境も整っているので、子供をもつことに抵抗は少ないことも要因のひとつになっています。

こうした生殖補助医療をめぐる法律や制限は、政府や医師、社会学者、宗教界の代表などで定められました。


フランスは不妊を病気として扱い、
「国」が率先して治療の質を確かめ、高めるため整備をしていること。

これが日本との違いと言えます。

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アメリカの不妊治療

アメリカの不妊治療では、個人によって加入している医療保険が違い、受けられる治療の種類や個人負担が大きく異なるのが特徴です。

また州法によっても異なり、アメリカでは現在、15の州では不妊治療が健康保険でカバーされます。

ただし一生涯の金額の上限が決まっていて、精子提供、卵子提供による不妊治療は、保険の対象外になります。


また年齢制限も「女性の体外受精の治療開始時期は45歳まで」となっているクリニックが殆どで、その年齢を過ぎると、自己卵子での体外受精はほぼ不可能な状態です。

そして不妊治療の経過によっては、年齢が上限に達していなくても、他の手段に切り替えを勧められることもあります。

アメリカの卵子提供

高齢でも、若い卵子の提供を受ければ妊娠率や生産率が高くなることは明らかになっています。

そのためアメリカでは、卵子提供による妊娠は不妊症治療法の選択肢のひとつになっています。

子どもを出産した女性を母親とするという法律上の原則があるため、卵子提供による生殖補助医療では、生まれた子どもの母が誰かという問題は起こりにくいのも利点です。

世界的に見ても卵子提供が一番多いのは米国で、体外受精の1割以上が卵子提供のもとで生まれた子どもになっています。

アメリカの代理出産

またアメリカでは代理出産も珍しくありません。

しかし代理母となる女性の卵子を提供する代理出産(出産女性自身の卵子を用いる)は、出産後に代理母が依頼者に引き渡さないケースが頻発したため、最近のアメリカではこの方法は採用されなくなっています。


変わって、出産女性以外の卵子を用いる新しい方法が、代理出産全体の85%以上を占めるそうで、代理出産全体の件数は年間600件近くにのぼります。



このように年齢の基準が存在していて、さらに体外受精の次の選択肢もあることから、日本のように確率の低くなってしまった体外受精が何度も繰り返し行われるようなことは少ないと言えます。

その結果、生産率の向上につながるのです。

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スペインの不妊治療

スペインでは、卵子提供・精子提供の場合は保険対象外ですが、それ以外の不妊治療は公立病院では40才未満が無料になります

スペインでの卵子提供

スペインでも卵子提供は行われていて、若い卵子を求めて渡航する日本人女性も増えているそうです。

自国での順番待ちを回避するためにも、スペインで不妊治療を行う外国人も多く、ある病院では患者の20%は国外からの受診者になっています。

しかしスペインでの卵子提供は、法律によって匿名で実施されることが義務づけられているため、子どもの遺伝子を血縁者から得るために兄弟姉妹などの家族の卵子や精子を使いたくても禁止されています。

つまり、将来子どもが自分の遺伝子上の親を知りたくても、匿名性の維持の為に知ることはできない決まりとなっているのです。

着床前診断で高い成功率

また胚の選別(胚の遺伝子異常を調べる着床前診断)もスペインでは合法です。

胚の染色体と先天異常のスクリーニングを行うことで、着床の難しい異常胚を先に排除し、もし採卵した中で「完璧な胚」があれば、体外受精の成功率は60~65%にもなり得るといわれています。

実際スペインでは胚の選別によって、体外受精治療の効果が高まり、この10年で体外受精の成功率は2倍になったそうです。


このようにスペインでは卵子提供や着床前診断の普及により、高い出産率を誇っています。


着床率を上げる方法についてはこちら。


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スウェーデンの不妊治療

人口950万人のスウェーデンでは、年間で約1万7000件の体外受精が行われています。

一般的にスウェーデンでは、子どもものころから妊娠・出産・不妊について教育されているので、不妊治療を始める場合も早くから受診する傾向にあります。

 

  • 夫婦かカップルで女性39歳、男性54歳までは保険適応
  • 第一子を産むまでは無料
  • 単身女性への不妊治療や代理出産は禁止
  • 精子提供による不妊治療は、男女のカップルだけ
  • 保険の場合、移植胚数は一回につき1個まで
  • 未成熟卵を利用した胚移植は2回までの限定(妊娠率が20%と低いため)

 

金銭的負担がないことで効率重視になる

体外受精が無料であるスウェーデンでは、下手にいろんな検査や治療をするよりも、体外受精にしてしまったほうがいいという考えが浸透しているようです。

医療現場でも
効率のよい治療を求める傾向があり、日本のように治療費のかからない一般不妊治療を経てからというよりも、結果の出やすい体外受精からスタートするようです。

またあえて保険を使用せず、複数個の胚移植を希望する患者もいるそうです。

一歩先をいく不妊治療

体外受精では、排卵が起こるぎりぎり前まで卵胞を育てて、「成熟卵」を採卵します。

採卵時に「未成熟」だった場合、成熟卵に比べて、その後の受精・分割・胚盤胞形成率は低くなるためです。

しかし、スウェーデンでは未熟卵の体外培養(IVM)の研究が進んでいます。

卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の予防の観点から、あえて未成熟卵を採卵できるように、未成熟卵子用の培養液の開発が行われているのです。

また、日本ではまだほとんど行われていない化学療法や放射線治療開始前の「卵巣・精巣組織」の凍結にも力を入れていて、病気による不妊治療の不成立を回避できる将来を目指しています。


このようにスウェーデンでは不妊治療に対する法整備がしっかりとなされ、妊娠率などを考慮して年齢や治療法に回数制限を設けることで、不妊治療の成果を上げています。


成熟胚による凍結胚移植についてはこちら。


イスラエルの不妊治療

人口880万人のイスラエルでは、体外受精は年間4万件行われていており、100万人あたりの件数は世界一です。

体外受精の費用が国の保険で全額カバーされます。

  • 女性が45歳まで
  • 現在のパートナーとの間に2人の子どもを得るまで
  • 養子縁組は支援の対象外


日本では出生胎児の5%を体外受精児が占めていますが、イスラエルでも4%の高さになっています。

社会的支援が手厚い

  • 有給の出産・育児休暇が15週間
  • 不妊治療中の女性にも年間最大80日の有給休暇
  • 女性には産後3ヶ月間の有給の産休
  • 更に3ヶ月の無給産休を取得する権利


また妊娠時に、国民健康保険に加入していなくても医療保険サービスの非居住者用プランなどがあり、妊娠時に一定の健診費用を保険適用にできる場合があります。

このように妊娠出産に対して支援が手厚いため、経済的事情や仕事上のキャリアとは関係なく、働きながらでも不妊治療に踏み切れる社会になっています。

日本では職場に不妊治療のことを伝えられなかったり、伝えても理解が得られず、辞めざるを得ないケースもあるので、こういった社会的な補償の有無は大きいと言えます。

代理出産も可能

イスラエルでは代理出産も認められています。

しかも婚姻関係の有無は問わず、イスラエル国籍を持つ男女のカップルであれば合法になっていて、20年間で824人が代理出産によって生まれています。

代理母と交わす契約書を保健省の専門委員会が審査し、代理母が出産した後も両親が裁判所で手続きをするといったように、きちんと国で管理するようになっています。


このようにイスラエルでは養子縁組といった血のつながらない親子関係よりも、ユダヤ人としての血のつながりを重視して支援しています。


また男女ともに家庭を持ち親となることを当然と考え、仕事をしながら楽しんで子育てに取り組み、また社会もそれを祝福し、応援する土壌があることが一番の要因かもしれません。

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まとめ

  • 海外では教育と国の支援がしっかりしているので、不妊治療に対する取り組みの姿勢が、個人でも社会でも日本と全然違う
  • 顕微鏡受精の先に、着床前診断、卵子提供、代理出産といった幅広い選択肢がある
  • まずは正しい知識を持ち、きちんと医師と話し合って、自分の条件に合った治療から始めていくべき!

 

というおはなしでした。


ネットでは、日本の生産率の低さに対し、「妊娠できない不妊治療が大量に行われている」と煽り文句も見かけましたが、ここで述べたような体外受精を行っている背景が考慮されていないので、額面通りに受け取れません。

卵子提供や代理出産が盛んであれば、卵子や母体の年齢が若い分、成功率も上がります。

保険で全額補助が受けられれば、若いうちから何回でも気軽にチャレンジもできるでしょう。

また日本人の心理的な傾向で、海外の現場では成果が低いことで敬遠されている「自然周期での採卵」も日本では普通に行われています。


このように国によって不妊治療の考え方や方針、フォロー体制が異なります。

助成金の上限、保険適応、着床前診断、代理出産の認可、精子提供、卵子提供、胚を戻す数の制限など、日本の不妊治療にまつわる法整備も含めて、全般的な問題があると言えるかもしれません。


最先端の治療を求めて海外に渡航するのもアリですが、まずは適切な時期にステップアップし、手遅れにならないうちに出来るだけ早く結果を出せる不妊治療」を始めることが一番大切なことだと思います。

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