着床不全で悲しむ女性の写真です。40歳未満で良質な胚を4回以上移植した場合の妊娠率は、80%以上といわれています。

一番最初の不妊検査ではわからなかった不妊原因が、タイミング法・人工授精・体外受精と治療をステップアップするごとに絞られていきます。

凍結保存まで至る良好胚盤胞が採れるということは、受精障害の因子は消え、残るは着床障害

グレードの良い胚を複数回にわたって胚移植しても妊娠に至らない場合、「着床不全」つまり着床に問題がある可能性を考えます。

着床不全と不育症の違い着床障害を疑うポイント流産を繰り返す確率、その場合に行う検査の内容、治療方法などをまとめました。

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着床できない難治性反復着床不全とは

特にグレードの良い胚を4個以上、体外受精を3回以上繰り返しても、胎嚢を確認できずに妊娠しない場合を「難治性反復着床不全」といいます。

着床をしたのち2回以上、連続して流産・死産した状態が「不育症」と言われています。
(出産後の早期新生児死亡を繰り返す場合でも同義)

着床不全と着床障害の違いは、卵(胚)がいつまで子宮内で成長できたか、発育停止の時期によって分けられています。


★着床不全
通常、胚移植をすると、約1週間かけて子宮内膜内に入り込んできます。

着床完了することなく、胚の発育が停止した場合、胚移植自体が「不成功」となります。

血液検査で陽性反応が出た場合は、まずは着床が無事に完了。

次の診察で胎嚢がみえる前までに発育停止すれば「化学流産」になります。
(化学流産は流産に含まれないと定義されている)


着床の流れはこちらで詳しく。



★不育症
胎嚢が見えてからが流産となり、妊娠12wまでに発育停止すれば「早期流産」、妊娠22wまでに発育停止すれば、「後期流産」と言います。

多くの流産は妊娠10wまでの流産がほとんどで、早期流産が全体の90%を占めると言われています。


生化学的妊娠
妊娠反応が陽性の後、胎嚢が確認される前に流産になる「化学流産」を、通常の流産の区別するために「生化学的妊娠」と呼ぶこともあります。

流産と区別する理由
  • 不妊症ではない健康なカップルでも、妊娠に気がつかないうちに「化学流産」を生理と勘違いしたまま経験している場合も多い
  • 流産手術の必要がなく、比較的心身への負担が少ない
  • 現在までの臨床研究の多くは、化学流産を含めず「流産」のみで累計しているため

着床不全と不育症の原因の割合

流産は全妊娠の10~20%に起こるとされています。

そして流産の約80%に胎児の染色体異常が認められるそうです。

染色体異常は受精した瞬間に決まるものなので、避けることのできない運命的なものになります。


自然淘汰による流産についてはこちら。



それでは、複数回流産を経験している場合の染色体異常の割合を計算してみましょう。

  • 1回…80%
  • 2回…80%× 80%= 64%
  • 3回…80%× 80%× 80%=約51%
  • 4回…80%× 80%× 80%× 80% =約41%

 

流産を繰り返す確率

このように、大半は避けることの不可能な流産で、偶発的に胎児染色体異常をくり返していることがわかります。 

また、妊娠歴のある 35~79 歳の女性うち、3 回以上の流産は 0.9%、2 回以上の流産は 4.2%で、38%が 1 回以上の流産を経験しているそうです。(厚生労働科学研究班の報告


一般に2回までの流産「反復流産」は3回以上の流産「習慣流産」とは区別して考えられます。

流産の確率を20%とすると、2回流産する確率は、25分の1(4%)、3回流産する確率は、125分の1(0.8%)となります。

反復流産は25人に1人の確率で起こりうる頻度の高い現象であり、「病気」とは見なされないのです。(中略)

既往流産回数と次回妊娠の流産頻度
0回(流産歴なし)
1回
2回
3回
次回流産頻度
11.1~21.4%
15.7~32.3%
31.8~43.7%
44.6~60.0%
生児獲得率
70~80%
40~60%




つまり毎年妊娠されるうちの数万人は「不育症」である可能性が考えられ、不育症自体は決して珍しい疾患ではないと言えます。

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着床不全と不育症の原因

化学流産をごく初期の流産と考えると、着床不全はごく初期の不育症とも考えられます。

流産の原因は様々ですが、多くは「卵の染色体異常」か「子宮内環境の異常」に分けられます。

体外受精が不成立になる原因の割合

体外受精は良質な卵を選んで胚移植をします。

そうしてグレードの高い胚を選んでいるはずの体外受精の妊娠率は30%台。

「見た目の良い胚」が必ずしも全てではなく、またいかに良い卵を子宮に送り込んでも、子宮内膜の問題で着床できずにいる現実があります。


胚のグレードについてはこちら。



そこで着床障害がある可能性の割合を、卵の染色体異常の原因が約70%、子宮内環境の異常の原因が約30%として計算してみました。


2回とも着床しなかった場合
卵の染色体異常の原因が、70%× 70%= 約50%
子宮内環境の異常の原因は、残りの約50%
3回とも着床しなかった場合
卵の染色体異常の原因が、70%× 70%× 70%= 約35%
子宮内環境の異常の原因は、残りの約65%



このように3回以上にわたり失敗している場合は、「子宮内環境の異常」つまり、子宮内膜に問題がある着床障害の可能性が考えられます。

逆にいえば、子宮環境の問題を予防できていれば助けられる卵もあったとも言えますよね。


もし子宮内膜の状態を整えられるのであれば、整えたい。

それにはまず検査が必要になるので、着床不全や不育症を疑う場合、担当医に検査をしなくてもいいのか状況の確認をとりましょう。


不妊検査についてはこちら。


着床不全の検査とは

着床不全は以下の2種類が考えられます。

全く着床していないケース
妊娠判定でhCG(妊娠中に産生されるホルモン)が1未満

着床後、早い時期に発育停止するケース
hCGは軽度上昇するが、経膣超音波検査で胎嚢が認められない


ごく初期の不育症とも考えられるため、着床不全の検査の中には、不育症と同様の検査が含まれています。

一般的な検査の内容

不育症の場合は、一次スクリーニングの検査には保険が適用されます。

★血液検査
夫婦どちらかに均衡型転座などの染色体構造異常があると、胎児の染色体に過不足が生じることがあり、流産の原因となります。

  • ウィルス感染症
  • プロラクチン、性ホルモン
  • 内分泌異常(糖尿病、甲状腺機能)
  • 抗リン脂質抗体
  • 自己免疫異常
  • 血液凝固異常
  • 夫婦染色体異常


男性不妊についてはこちら。



子宮形態の検査
子宮筋腫や子宮形態異常の場合、着床の障害になったり、 胎児や胎盤を圧迫して、流産・早産になるケースがあります。

  • 超音波検査
  • 子宮鏡検査
  • 子宮卵管造影


1 回の流産でも妊娠10w以降の流産の場合や死産、早期新生児死亡の場合には、母体の要因が大きくなると考えられているので、検査をする選択肢もあるそうです。


しかし子宮環境の検査は多岐にわたり、また原因も複雑に絡み合っていることもあり、着床不全や不育症の検査を行なっても、6 割以上の場合リスク因子がはっきりとはわかりません。

着床に問題があるケースは、不妊治療では最も難問であるのは確かなようですね。。。



不妊治療についてはこちら。


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着床不全の遺伝子検査

比較的新しい検査で遺伝子レベルで着床障害の因子を調べる検査があります。

着床しない原因のうち、3つがわかる検査をそれぞれまとめました。

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子宮内膜着床能検査(ERA / エラ)

妊娠が成立するには、受精卵が子宮内膜に着床することが必要です。

そして排卵後の数日間に、子宮内膜は受精卵を受け入れるための準備をして「卵の到着を待っている時期」があり、これを「着床窓(implantation window)」といいます。


一般的に、排卵日(採卵日)から5~7日目に、着床窓が開いていると考えられていましたが、この時期が個人によって違う可能性があることが分かったのです。



通常は3日ぐらいの期間が、場合によっては24時間ぐらいのケースも見られ、通常に比較して着床のチャンスが3分の1に低下しているなんてことも。。。

なかなか着床できない原因の1つに、着床窓が開いている時期がズレているということがあるのかもしれません。

  1. 自分の着床の窓があいている期間を知りたい
  2. 胚移植を行うタイミングを把握したい
  3. 最適なタイミングの胚移植をすることで、妊娠率を高めたい


良好な胚を使用した胚移植の場合、妊娠率が約25%向上するというデータもあるそうです。

 

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子宮内膜マイクロバイオーム検査(EMMA / エマ)

近年の研究で子宮内にも微生物の集団(細菌叢)がいることがわかり、そのバランスが崩れることで妊娠率が下がることが示されています。

その中でも特に子宮内膜の乳酸菌の割合は、着床・妊娠率に大きく関わり、不妊の一因となっていると指摘されています。

この検査では、子宮の細菌環境が「胚移植に最適な状態」であるかどうかを、子宮内膜の細菌の種類と量を調べて判定することができます。

  1. 子宮内膜の細菌の種類と量のバランスが正常か知りたい
  2. 着床しやすいように子宮内の環境を整えてたい
  3. 自分の子宮内膜の状況を調べておきたい
  4. 子宮内膜環境改善の適切な治療が受けたい


乳酸菌膣錠を用いた治療で子宮内環境を改善し、乳酸菌の割合を90%以上に上げることにより着床・妊娠率が向上すると考えられています。

乳酸菌90%以上90%以下
着床率0.6010.231
妊娠率0.7060.333
妊娠継続率0.5880.133
生児獲得率0.5880.067
Preliminary results were presented at the 62nd Annual Scientific Meeting of the Societyfor Reproductive Investigation, San Francisco, CA, March 25-28, 2015.

 

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感染性慢性子宮内膜炎検査(ALICE / アリス)

不妊症の女性の約30%が慢性子宮内膜炎にかかっていて、着床不全や不育症(習慣流産)患者の有病率は60%に達すると言われています。

子宮内の細菌感染が続くと、炎症反応を防ごうと免疫活動が通常よりも活発になり、受精胚を異物として攻撃してしまうため、着床率が下がると考えられています。

慢性子宮内膜炎は、細菌感染などさまざまな原因で起こる疾病で、気がつかないまま進行している場合があります。

 

原因菌の一例
  • 大腸菌
  • 連鎖球菌
  • ブドウ球菌
  • 淋菌
  • 腸球菌
  • 結核菌
  • バクテロイデス など


多くは無症状なため、現在利用されている診断法(組織学、子宮鏡、細菌培養)では見逃されることもよくあるそうです。

もし見つかった場合は、慢性子宮内膜炎を起こす原因菌を抑えるために、抗生剤を投与する治療が行われます。


慢性子宮内膜炎の治療には、抗生剤のドキソサイクリンを服用しますが、抗生剤加療を始めたら、妊娠率が改善したという報告があります。

抗菌薬を14日間服用したところ、約90%の方が快方に向かったという報告もあります。
その後、治療を受けた方の、およそ60%が妊娠するという結果もあるといいます。



しかし通常の検査で慢性子宮内膜炎が判明しても、その疾患の原因となる病原菌を正確に特定することができないため、広域抗生物質が処方されることが多いのが実情です。

  1. 細菌感染がないか調べたい
  2. 慢性子宮内膜炎の病原菌を特定したい
  3. すでに慢性子宮内膜炎と診断されて、短期間で適切な治療をしたい


この検査では、特定の細菌検出とその数がわかることが最大の利点となります。

慢性化させる細菌
  • エンテロコッカス属菌
  • ストレプトコッカス属菌
  • スタフィロコッカス属菌
  • マイコプラズマ属菌
  • ウレアプラズマ属菌
  • 腸内細菌科
  • クラミジア属菌
  • ナイセリア属菌 など


検出された最近に合わせた抗生剤が処方されるので、効果的な治療が行えると考えられています。

 

着床障害の遺伝子検査のデメリット

  • 保険が利かないので費用が高い
  • 子宮内膜の生検は麻酔なしなので痛い
  • 検査を行う周期は胚移植ができない(避妊が必要)
  • 代理店経由でスペインに送るため、検査結果がわかるまで2~3週間かかる
  • 着床時期がズレている場合は再検査が数回必要な場合も(2回目以降は安くなる場合が多い)
  • 単独の検査は推奨されていない場合もあり、病院によっては単一でできない検査もある

 

ERA・EMMA・ALICEは、今までの検査ではわからなかった部分を遺伝子学的に検査することが可能ですが、時間とお金がかかることがデメリットと言えます。

単独でも可能ですが、ERAの生検でEMMAとALICEも同時に調べられます。

セットで行うことにより、より総合的に子宮内膜の評価を行うことができるので、複数同時検査での料金設定をしている病院が多かったですね。

検査を行う時期
ALICE検査…5万前後
➡ 自然周期、ホルモン補充周期の移植の予定日(黄体期4日目・黄体期6日目)

EMMA + ALICE検査
…6~7万前後
➡ 月経15~25日頃(高温期)に実施

ERA検査…13~15万前後
➡ 凍結胚移植と同様ホルモン補充周期で胚移植予定日に実施


ALICE検査で炎症を治し、EMMA検査による子宮内膜細菌を整え、ERA検査による子宮内膜着のタイミングを計り、胚移植の妊娠率の上昇効果を狙えると考えられているのです。


3つ全ての検査を行う場合、13~20万ほど。

クリニックによって料金設定は色々なので、開きがありますね(^^;

まずは自身の通われている病院で行われているか聞いてみるといいかもしれません。


不妊治療のストレスについてはこちら。


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まとめ

  • 着床不全の原因は、子宮内膜にある
  • 3回以上失敗している場合は、追加のスクリーニング検査をして原因を探すのもあり
  • ストレスはさらなる着床不全・反復流産を引き起こす因子ななるので、思いつめる前に誰かに相談して他者に助けを求めよう

 

というおはなしでした。


これ!といった分かりやすい原因があれば、ずっと気が楽になりますが、多くの場合は「今までの妊娠不成立のすべて」をひとつの原因だけで説明することはできません。

不妊治療を続けることによる心と体のストレスで、新たな因子が発生していることもあります。


反復流産で受診する方の不安レベルは精神科の外来患者の不安レベルに近く、抑うつ傾向が強いと言われています。

少しでも心身の不調を感じたらカウンセリングを受けるなど、精神の安定をはかり、不安症状の早期解決をすることで、間接的に妊娠率の向上にもつながると思います。

まずは自分をいたわってあげることも大切! ですね。


ストレスチェックにはこちらも。

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